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MARANTZ(マランツ)プリメインアンプMODEL 30試聴レビュー
最近のMARANTZ製品のスタイルはキープコンセプト的な感じで同じようなレイアウトが続いていましたがMODEL30はモデル名やデザインが一新されています。
キャッチコピーもこれまでの「because music matters」(すべては音楽のために)から新たなコピー「Modern Musical Luxury」へと変更されました。
この方向転換には大きな驚きを感じた方も多くいらっしゃると思います。機能面から音質までしっかりとレビューしていこうと思います。
MARANTZ(マランツ)プリメインアンプMODEL 30の仕様
フロントパネル
16年ぶりにブラッシュアップされたデザインはシンプルでモダンな印象。シンメトリーで非常にスタイリッシュです。
左からインプットセレクター、カードリッジ切り替え、Bass、Treble、Balance、ボリュームと並びます。左の電源スイッチに対応するように右側にヘッドフォン入力端子が配置され完全に左右のバランスが均等になっています。
質感も高く素晴らしいデザインセンスだと思います。
現代的で洗練されたスタイリッシュなデザイン
リアパネル
スピーカー端子は1系統のみでバイワイヤリングには対応していませんが5系統のアナログ入力、MM/MC対応のphono入力など十分な入力系統があります。
最近のモデルではUSBなどデジタル入力が用意されているものもありますがアナログのみというのも効率が良く好印象です。
デジタル入力が無く長く使える安心感
新しい解釈で生まれた素晴らしいデザイン
コントロールノブの配置される部分は1レイヤー前に設置され、隙間に仕込まれたLEDの光でフロントパネルの両サイドが照らされます。上質な間接照明のようでインテリアとしても大きな存在感を放っています。
フロントパネル両サイドには凹凸があり光と影の演出まで計算されています。躯体サイズも音質と出力の割にコンパクトにまとまっており非常に洗練されたデザインです。
新たな息吹を感じる新生Marantzから生み出された作品
電流帰還型プリアンプ
プリアンプ部にはマランツ独自のアンプモジュールHDAM-SA3を使った電流帰還型アンプにDCサーボを搭載しています。
アンプには電圧帰還型と言われる方式が一般的ですがMODEL30は電流帰還型です。帰還とはフィードバックとも呼ばれ、入力信号を出力信号の差異を比べて調整する工程のことです。
一般的な電圧帰還型のデメリットとしてはゲイン(増幅量)を上げようとすると周波数特性に影響がでて再生可能周波数の高域側に制限をかける必要があります。
電流帰還型のメリットとしては回路の高速化や周波数特性のバランスを保ったまま大きな利得(信号の増幅量)が得られることなどがあげられます。「電流帰還型」のフィードバック方式はワイドレンジかつハイスピードを実現する為の手法です。
周波数特性に優れた電流帰還型のフィードバック方式を採用
大容量のプリアンプ専用電源回路
プリメインアンプにはプリアンプ部分とパワーアンプ部分の二つのアンプ回路が同居しています。もちろんどちらも大切な部分で音に影響しますが私はプリアンプが音質に大きく影響すると思っています。プリアンプ部分でなるべく正確で緻密な増幅をし、パワーアンプで大きな出力を得るために信号を増幅します。
信号を増幅するという仕事としてはどちらも同じですがその性格は異なります。MODEL30ではプリアンプ専用の電源回路を採用しパワーアンプによる電源歪の影響を回避し、安定した電源供給を確保しています。
プリアンプに最高の電源環境を用意
200W4ΩのスイッチングパワーアンプモジュールNC500
パワーアンプ部にはHypex社のNcoreNC500というスイッチングアンプモジュールが採用されています。
スイッチングアンプの特徴としては効率が良く(大出力を得られる)小型化が可能なことがあげられます。デメリットとしてはインピーダンスによって周波数特性が変わってしまうことと、スイッチング電源による高周波のノイズがあげられます。しかしスイッチングアンプでありながらこの大きなデメリットを解決したのがNcoreです。
まだ新しい技術で伸びしろが大きな分野でしたがマランツは早い時期からNcoreを採用しその技術を高めてきました。MODEL30でも熟成されつつあるNcoreの使いこなしにより音質面でも大きなアドバンデージが感じられます。
さらにレイアウトの工夫によりアンプモジュールからスピーカー端子までの距離は1㎝と最短の信号経路で伝送されます。
マランツおなじみのNcoreを採用
仕様
定格出力 | 200 W + 200 W(4 Ω、1 kHz、T.H.D. 0.1 %) 100 W + 100 W(8 Ω、1 kHz、T.H.D. 0.05 %) |
全高調波歪率 | 0.005 %(50 W、8 Ω、1 kHz) |
周波数特性 | 5 Hz – 50 kHz (±3 dB、CD、1 W、8 Ω) |
ダンピングファクター | 500(8 Ω、20 Hz – 20 kHz) |
入力感度/入力インピーダンス | PHONO(MC Low)250μV / 33 Ω、PHONO(MC MID)250μV / 100 Ω、 PHONO(MC HIGH)250μV / 390 Ω、PHONO(MM)2.3 mV / 39 kΩ、 CD / LINE 220 mV / 18 kΩ、POWER AMP IN 1.0 V / 18 kΩ |
出力電圧/出力インピーダンス | PRE OUT 1.6 V / 220 Ω |
PHONO最大許容入力 | MC 8 mV(1 kHz)、MM 80 mV(1 kHz) |
RIAA偏差 | ±0.5 dB(20 Hz – 20 kHz) |
S/N比(IHF Aネットワーク、8Ω) | PHONO(MC)75 dB(0.5 mV入力)、 PHONO(MM)88 dB(5 mV入力)、 CD / LINE 107 dB(定格出力) |
音声入力端子 | アンバランス × 5、PHONO × 1、POWER AMP IN × 1 |
音声出力端子 | プリアウト × 1、RECアウト× 1、ヘッドホン × 1 |
その他入出力端子 | マランツリモートバス(RC-5)入出力 × 1 |
最大外形寸法 | W443 x H130 x D431 mm |
MARANTZ(マランツ)プリメインアンプMODEL 30の音質レビュー
それではMODEL30の音質レビューです。今までのマランツのプリメインアンプのイメージとはかなり違いました。想像していたよりもドライな感じでロー、ミドルの帯域に厚みがあります。
今までのマランツのサウンドチューニングはすっきりしていてクールな印象だったので意外でした。
音離れは良くクッキリと音の粒を描く表現力は十分に感じられます。全体としてはとても良い音質のプリメインアンプだと思います。
デメリットとしてはハイの空気感がなくなってしまうように感じました。
最初にJBLのSTUDIO 680との組み合わせで聴いてみましたが正直に書くと私の好みの傾向ではありませんでした。
MODEL30からmarantzのPM-12OSEに変えると中高域の潤いと空気感が出てきて音が鳴った瞬間に素晴らしいと思える音色です。PM12-OSEはMODEL30に比べると低域がすっきりしていて迫力はMODEL30の方が感じられると思います。
しかし他社のプリメインアンプとも比較してみてある程度の傾向が把握できたので最後にスピーカーを先月リリースされたばかりのB&Wの603s2Anniversary Editionにしてみたら印象はすっかり変わりました。
603s2とMODEL30の組み合わせでは音の実在感と空気感のバランスが非常に良好で私の好みにドンピシャでした。PM-12OSEと603s2のセットよりも好きなバランスでした。
音量も小音量から割と大きめな音量でも破綻することなく楽しめます。
最終的には最初の印象とはまるっきり評価が変わり素晴らしいプリメインアンプだと思いました。どのオーディオ機器でもそうですがやはり組み合わせは大切だと改めて認識できました。そして603s2が最高なので欲しくなりました。
パワーがあり中低域の音の粒に厚みとパンチがある
B&Wの603s2Anniversary Editionのレビュー記事はこちら
MARANTZ(マランツ)プリメインアンプMODEL 30の評価
MODEL30の実売価格は約25万円。この音質でこの価格は完全に買いだと思います。しっかりとした音楽性と見た目のスタイリッシュさで所有感も満たされます。同価格帯には実力機が揃っていますがその中でも頭一つ抜けているような印象です。
中低域の厚みががありつつ高域の美しさも抜群なので音楽で感動を表現する力が抜群だと思います。
長い伝統の中から生まれた革新。新しいマランツの息吹を感じる名作プリメインアンプとして名を遺すプロダクトだと思います。
音質・価格・デザイン全てにおいて満足できる逸品
MARANTZ(マランツ)プリメインアンプMODEL 30におすすめのスピーカー
MODEL30に組み合わせるスピーカーはどんなものでも良いと思いますがせっかくならハイレベルなものを用意したいです。おすすめをいくつかピックアップします。
B&W(Bowers & Wilkins)ブックシェルフスピーカー603s2 Anniversary Edition
この組み合わせは価格と音質のバランスていったら最高の組み合わせだと思います。実際にこれで試聴してMODEL30のポテンシャルを感じることができました。
ご試聴できる環境があればぜひ実際に音を聴いていただきたいです。
B&W(Bowers & Wilkins)ブックシェルフスピーカー805d3
805d3は非常に高い再生能力を持ったスピーカーです。リアルな声の質感や厚みがあって実在感を感じる中低域。スピード感も艶感もあって鳥肌が立ちます。A-S3200との組み合わせでも素晴らしい世界へと連れていきます。
価格別おすすめスピーカー
価格帯別におすすめスピーカーのカテゴリーページを作りましたので良ければ購入の参考にされてみてください。
最後に
最近の機材はどんどん品質が向上しているように感じます。開発するときには前のモデルを超えるようにエンジニアの方たちが頑張っているのでしょうね。
良い音で音楽を聴く。別の世界へ行く体験をする。
この文化がさらに発展していけば素晴らしいなと思います。
スピーカーやアンプのポテンシャルを引き出すセッティングに関する記事をまとめましたので合わせてご確認ください。
皆様が良い音楽と過ごせますように。